つちうら税理士法人
法律を理解するには、その背景、理由がわかると簡単です。
リーディングケース1
未払残業ケース
日本マクドナルドの熊谷市の店長高野さんが「権限のない店長を管理職扱いし、残業代を支払わないのは不当」として、未払い残業代や慰謝料など計約1350万円の支払いを求めた。
原告者の証言を下記にまとめてみる。
「99年に別店舗で店長に昇格して以降、残業代が支払われなくなった。
残業が月100時間を超え、2ヶ月間も休みがなかったこともある。
部下はほとんどがアルバイトであり、社員は1人いるかいないかである。
そのため、アルバイトの採用や教育、シフト作成、金銭管理などのマネジメント業務をこなす一方で、
店頭や調理場にも立たなくてはいけない状況であった。」
人件費削減や、営業時間延長で勤務時間が伸びる一方で
収入は増えず「これでは過労死する」と
05年5月労働組合の「東京管理職ユニオン」に駆け込み、会社を相手に提訴するに至った。
判例
1月28日東京地裁は、未払い残業代約503万円と、労働基準法に基づきその半額について懲罰的な意味合いを持つ「付加金」を合わせ、計約755万円の支払いを同社に命じた。
この訴訟の争点であった、原告者の職務内容が「管理監督者」に当たるかという点は、
「職務や権限は店舗内の事項に限られ、経営者と一体的といえる重要なも のではない。労働時間の裁量もない」
○アルバイトの採用権限はあっても社員はない
○勤務時間が店舗営業時間に従うことを余儀なくされる
○独自メニュー仕入開発などができない
○一部の店長が部下の年収を下回っている 賃金不十分
○経営方針など決定に関与していない 経営者と一体でない。
として管理職には当たらないと裁判官は判断した。
日本マクドナルドは29日、同社敗訴とした1審東京地裁判決を不服として控訴した。
管理監督者の定義
○経営者と一体になって、一般従業員を指揮監督している
○職務の性質上、労働時間及び、休憩休日に関する規制の枠を超えて働くことを要請されている
○始業、終業の時間について細かな拘束を受けてない。(タイムカード管理されてない)
○賞与、賃金などが、一般従業員と比べて明らかに優遇されていること。
○実態は管理職でないのに管理職にすれば残業代を逃れられるという経費削減策は、今のインターネットなどの情報氾濫している状態では従業員の辞めた後訴えられるリスクがあります。
○社員は従業員でなくなり転職後残業代を支払われるようになり気がつくこともあります
○外食、紳士服などの量販店、その他すべての店長と呼ばれる人に影響を与え見直しをすべき事を示唆した事件でした
○会社にとり紙面にこのようなコンプライアンス違反が広められることにより非常なイメージダウンになります、
○訴えた従業員も再就職のときに不利になる可能性があります。
これらを防ぐため
@ 労基法上の割増賃金、残業代の計算を守る。(コンプライアンス遵守)
管理監督者とそうでないものの区別 事業場外裁量労働制、変形労働時間制などの適用検討
A 生産性の向上、労働効率を上げる サービス残業をなくす
B 職務を明確にして、社員とコミュニケーションをとる 労使の話し合い
長崎大が残業代不払い 過去2年間で7300万円
訴訟概要 判例
長崎大学(斎藤寛学長)が、付属小中学校や特別支援学校の教諭や付属病院の医師、看護師らに、十分な残業代を支払っていなかったとして、長崎労働基準監督署から是正勧告を受けた。長崎大は、付属学校教諭74人に計3900万円、付属病院職員に計2900万円、学部教員に計470万円の総額約7300万円を、10月の職員給与に上乗せして支払うことを検討。今月末に、改善策とともに労基署に報告する。
長崎大などによると、今年5、6月に付属病院や事務局などに労基署の立ち入り検査があった。その結果、残業代を2年間さかのぼって支払うよう7月に是正勧告があった。
勧告では、医師が勤務時間を超えて手術をしているのに超過勤務命令簿に記載がなかったり、病棟看護師の超過勤務命令簿と勤務時間報告書の記載内容が全く異なっていたりしたと指摘されたという。
同大は、独立行政法人化した後の05年にも2度、是正勧告を受けている。斎藤学長は「再び勧告を受けたことを深刻に受け止めている。給与の是正、時間外労働の管理システムの検証など真摯(しんし)に対応していく」とコメントした。
この事件から学ぶこと
○賃金は2年間、退職金は5年間さかのぼって遡及することができる。
○一度是正勧告したのに再度やると、悪質な場合書類送検もありうる
○悪質な場合労働基準法114条の規定により裁判所は、付加金の支払いに基づき倍額支払い命令もできる。
○
リーディングケース2
うつ病判定のケース
セクハラやパワハラ等職場のストレスから精神疾患を患い、最悪の事態では
自殺にまで至ってしまいます。
2007年10月にも、初めてパワハラによって発症したうつ病での自殺に労災認定
がなされたばかりです。(平成19年10月15日東京地裁)
ストレス「ある」労働者、約6割 厚労省調べ
厚生労働省は10日、労働者健康状況に関する調査結果を発表した。それによると、強い不安や悩み、ストレスが「ある」と回答した労働者の割合が約6割であることが分かった。5年前実施した調査結果に比べるとわずかに減少しているものの、依然高い水準にあることが明らかになった。
仕事や生活について強い不安や悩み、ストレスがあると答えた比率は、前回の調査結果比3.5ポイント減の58.0%だった。男女別に見ると男性は59.2%、女性は56.3%。就業形態別では、正社員は61.8%、契約社員は56.2%など。性別や就業形態を問わずストレスを抱えている労働者が多い。
このように労働者本人の家庭環境の他、一般的に企業に雇用されて勤務する労働者の場合、職務上のストレスの影響が大きく
1日のうち多くの時間を過ごす職場での人間関係、職務内容が、うつ病等の発症に大きく影響することが認知されるようになりました。
今まではなかなか労災認定が難しかった心の病ですが、業務との間に相当の
因果関係が認められ、労災認定を受けるケースが増えてきています。
そのきっかけを作ったのが、いわゆる「電通事件」です。
(最高裁第2小法廷 平成12年3月24日)
訴訟概要
24歳の男性社員が、入社後1年5ヵ月後の平成3年8月に自殺に至りました。
判例
裁判所は、この「うつ病による自殺」に企業側の全面的な責任を認め、損害賠
償金1億2600万円(遅延損害金含めると約1億7000万円)の支払を命じました。
この事件から学ぶこと
○脳・心臓疾患(長期にわたる疲労の蓄積も、業務災害の対象となる)
○メンタルヘルス(これも業務災害、会社の安全配慮義務が問われる)
○長時間労働(脳・心臓疾患やメンタルヘルス障害との関係が強いとされる)
会社が働く人の心身の健康のためにするべきことを怠っていたら
会社は労働基準監督署の監督指導をうけて改善すればいいのですが
実際に職務に起因するうつ病、安全配慮義務を欠いていた労災事故が起きた場合
賠償金額が億を超えるため中小企業では倒産しかねません。
厚生労働省の調査で、労働基準監督署の是正指導を受け、2007年度に100万円以上の未払い残業代を支払った企業が前年度比約3%増の1728社と過去最多になったことが分かったそうです。また、未払い残業代の総額も同約20%増の272億4261万円で、過去最高だったそうです。
リーディングケース3
安全配慮義務について
1.陸上自衛隊事件
訴訟概要
陸上自衛隊員が自衛隊内の車両整備工場で車両整備中にバックしてきたトラックにひかれて死亡した。
死亡した隊員の両親が国に対し、『国は使用者として自衛隊員の服務につき、その生命に危険が生じないように注意し、人的物的環境を整備し、隊員の安全管理に万全を期すべき義務を負うにも関わらず、これを怠った』として、債務不履行に基づく損害賠償を求めて訴えを起こしました。
判決と解説
国と公務員の間にある義務として、国家公務員法、自衛隊法などで、
、国は、公務員に対し、安全配慮義務を負っていると解すべきである。
2、川義事件
訴訟概要
宿直勤務中の従業員が強盗に殺害された事件で、会社に安全配慮義務の違背に基づく損害賠償責任求めて訴えを起こしました。
会社は、午前9時から24時間の宿直勤務を命じ、宿直勤務の場所を社屋内、就寝場所を同じ社屋内の1階商品陳列場と指示したのだから、そこに強盗が簡単に入れないような設備を施し、万が一強盗が侵入してきたときにそなえて、危害を受けないですむような設備を設け、設備設置が無理なら宿直員を増員したり安全教育を行うなどして、労働者の生命・身体に危険が及ばないように配慮する義務があった。
この事件から学ぶこと
○安全配慮義務とは、例えば、安全装置を設けるべき機械には安全装置を設けたり、安全教育をキチンと行ったり、過重労働にならないよう注意したりです。
○目安ですが、月で労働時間が250時間を超えていると大概は過労死と認定されています。
○この安全配慮義務を怠って、事故や病気に至ったときは損害賠償を請求されることになります。
3,看護師過労死事件
訴訟概要
過労死 看護師を労災認定 残業1カ月100時間
東京都済生会中央病院(東京都港区、高木誠院長)に勤務していた看護師の高橋愛依さん(当時24歳)が亡くなったのは長時間の過重労働が原因だとして、東京・三田労働基準監督署は過労死の労災認定をした。17日に会見した代理人の川人博弁護士によると、看護師の過労死が認定されるのは極めてまれだという。過労死を認定されにくかった不規則勤務の労働者の労災認定に影響を与えると見られる。
三田労基署は今月9日、月80時間近い残業を認定し、連続勤務や休日の少なさなどから過労死と認めた。24時間以上拘束の当直を勤務時間と認定したと見られる。埼玉県在住の高橋さんの父は「病院は一貫して因果関係を認めようとしなかった。認定で医療関係者に限らず労働環境の改善が近づくものと信じている」とコメントした。済生会中央病院は「決定を真摯(しんし)に受け止め、再発防止など今後の対応を協議したい」と話した。
この事件から学ぶこと
厚生労働省発表の過労死の労災認定基準
[1] 発症前1ヵ月間ないし6ヵ月にわたって、1ヵ月当たりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱いが、おおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症の関連性が徐々に強まると評価できること
[2] 発症前1ヵ月間におおむね時間外労働が100時間又は発症前2ヵ月間ないし6ヵ月間にわたって、1ヵ月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できることとなっています。
医療、介護の職務の責任の重さなどもストレスの一因
不規則勤務の場合の不眠症 抑うつ病になる割合は3,3倍とされていおり、認定基準だけの判断でなく実態も加味した判断といえましょう。
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