令和8年度(2026年度)版・正社員化コース

キャリアアップ助成金
正社員化コース 申請実務マニュアル

「不支給リスクの排除」と「受給額の最大化」を両立する、申請手順の実務ガイドです。最大で1人あたり80万円+加算
日付管理と証拠づくりを、申請書を書く前から設計します。

✔ 計画は取組の前日まで ✔ 賃金3%以上増額 ✔ 6か月賃金支払→2か月以内申請 ✔ 支給決定翌日から5年保存
有期・パート 正社員
このページの内容
  1. 令和8年度の重要変更点
  2. 正社員化コースとは/正社員の定義
  3. 支給額(早見表)
  4. 重点支援対象者とは
  5. 申請の全体フロー
  6. 実務タイムライン
  7. 電子申請の進め方
  8. 必要書類
  9. 就業規則の条文サンプル
  10. 賃金3%増額の落とし穴
  11. 不支給を招く罠チェック
  12. 申請前の最終チェック
  13. 解説動画
  14. 公式リンク集

1令和8年度の重要変更点WHAT'S NEW(令和8年4月8日更新)

まず、令和8年度に変わった点を押さえます。古い情報のまま計画を立てると、不支給に直結します。

+

情報公表加算が新設

転換実績などを自社サイトまたは「しょくばらぼ」に公表すると中小20万円・大企業15万円を加算(1事業所1回)。R8.4.8以降の取組が対象です。

社会保険適用時処遇改善コース廃止

令和8年4月1日に廃止。R8年度以降の社会保険適用は短時間労働者労働時間延長支援コースへ一本化。廃止コースでの計画立案は致命的ミスです。

電子申請が原則に

「雇用関係助成金ポータル」での電子申請が原則。電子の計画は始期を提出日の翌日以降にしか設定できず、遡及は一切不可です。

2正社員化コースとは/正社員の定義審査の核心は「正社員の中身」

有期雇用労働者等を正規雇用へ転換、または派遣労働者を直接雇用した事業主が対象です。単なる「無期化」では足りず、正社員待遇の制度設計が必要です。

助成対象となる「正社員」の3要素(就業規則に規定+実態として適用)

① 賞与 または 退職金

いずれか1制度以上を規定。「原則支給」と読める表現が必須です(裁量だけの表現はNG)。

② 昇給

原則として年1回以上の実施を予定。「毎年○月に勤務成績に応じて」など客観的基準で。

③ 長期雇用前提の待遇

正規雇用として妥当な待遇であること。①②と合わせ「長期雇用を前提」と確認されます。

賞与・昇給の規定表現(OK/NG比較)

項目支給対象となる表現(安全)不支給リスクの高い表現(危険)
賞与「原則として支給する。ただし業績により変動あり」「支給しない。ただし業績により支給することがある」
昇給「毎年○月に、勤務成績に応じ昇給させる」「会社が必要と判断した場合に昇給を行う(基準不明)」

判定の分かれ目:「原則支給が明瞭で、客観的基準があるか」。会社の恣意的判断のみの表現は不可です。

3支給額(早見表)1人あたり・令和8年度

「重点支援対象者」に該当するかで金額が大きく変わります。さらに各種加算が上乗せされます。

転換の種類区分中小企業大企業
有期雇用 → 正規重点支援対象者80万円60万円
上記以外(一般)40万円30万円
無期雇用 → 正規重点支援対象者40万円30万円
上記以外(一般)20万円15万円

主な加算(上乗せ)

加算の種類加算額要件のポイント
新たに正社員転換制度を整備20万円対象期間内に新しい転換制度を規定し、最初の対象者を転換
多様な正社員制度を新規規定し転換
(勤務地限定・職務限定・短時間正社員)
40万円いわゆる「限定正社員」区分を新設して転換
情報公表加算(R8新設)中小20万 / 大15万転換実績等を自社サイト・しょくばらぼに公表(1事業所1回)

※支給対象人数には1年度1事業所当たりの上限があります。金額・要件は年度途中で変わり得るため、申請前に必ず厚労省の令和8年度版パンフレットで最新を確認してください。

4「重点支援対象者」とは最大80万円の対象かどうか

次のいずれかに当てはまる方が「重点支援対象者」です。該当すると支給額が大きく上がるため、対象者ごとに必ず判定します。

雇用期間が3年以上の有期雇用労働者
雇用期間3年未満で、過去5年間の正規雇用が通算1年以下かつ直近1年間に正規雇用なし(不安定雇用者
派遣労働者、母子家庭の母等・父子家庭の父、人材開発支援助成金の特定訓練修了者
!
判定は対象者ごと。雇用契約書・賃金台帳で勤続年数や雇用歴を客観的に確認します。

5申請の全体フロー「計画が先、取組はあと」が鉄則

最大の事故は「計画提出より前に転換してしまう」こと。取組は必ず計画期間の中で行います。

1
キャリアアップ計画を提出
対象者から意見聴取し、キャリアアップ管理者を選任。コース実施日の前日までに提出します。前日まで/計画期間は3〜5年
2
就業規則・賃金規程を整備
正社員転換制度に「要件・手続・実施時期」を明示。10人未満で未届なら周知の申立書を準備。
3
計画期間内に正社員転換を実施
雇用契約書を再交付し、社会保険・雇用保険の資格取得を同日処理。取組日は計画期間内(期間外は救済不能)
4
転換後6か月、継続雇用+賃金支給
転換前6か月と比べ賃金3%以上増額。勤怠・賃金台帳を平時運用のまま保存。
5
支給申請
6か月分の賃金支払日の翌日から2か月以内。時間外手当を翌月別払いなら、その支払日が起算基準。必着(消印無効)
6
労働局の審査・補正対応 → 支給決定
追加資料は期限内に提出(未対応は不支給リスク)。
7
書類を5年間保存
支給決定日の翌日から5年。返却されないため、PDF・写しで一元管理。

6実務タイムライン「証拠が自然に残る運用」を先に作る

助成金は「申請業務」ではなく「労務運用の設計」です。下の流れを取組前から一体で組みます。

1 企画 コース選定・意見聴取 2 規程整備 就業規則・計画提出 3 実施 転換・契約再交付・社保 4 6か月運用 3%増額・証憑保存 5 申請・保存 2か月以内→5年保存

役割分担の目安:経営者=コース選定の決裁/人事労務=規程改定と計画書/給与担当=賃金算定と支給日管理/総務・社労士=社保・雇保手続/現場管理職=推薦・面談・実施記録/経理=口座・保存台帳。

7電子申請の進め方雇用関係助成金ポータル

A
GビズIDプライムを取得
すべての基盤。発行に日数がかかるため早めに申請します。
B
雇用関係助成金ポータルに登録
ログインし、自社情報を登録します。
C
支払方法・受取人住所届を提出
支給申請より前に、ポータル上で提出済みにしておきます。
D
計画届 → 支給申請
コースごとに計画書を提出し期間を設定。始期は提出日の翌日以降のみ・遡及不可。紙の計画だけでは電子の申請画面は出ません。

紙・電子の取り違いに注意

電子の計画始期より前の取組は紙申請、始期以降は電子申請が原則です。案件ごとに最初から「紙でいく/電子でいく」を決め、混在を避けます。

8必要書類(正社員化コース)整合性がすべて

労働局は、就業規則・雇用契約書・賃金台帳・出勤簿・本人確認の整合性を見ます。1つだけ整えても足りません。

支給申請書(様式第3号)
別添様式1-1 正社員化コース内訳
別添様式1-2 対象労働者詳細
事業所確認票
対象者確認票(本人署名・原本
転換制度を定めた就業規則・労働協約
転換前後の雇用契約書・労働条件通知書
転換前後6か月分の賃金台帳・出勤簿
賃金上昇要件確認ツールの出力
(加算時)情報公表画面の写し等
(10人未満・未届時)周知の申立書(事業主+労働者代表署名)

原本主義(最重要)

提出は原本またはそのコピーが鉄則。「見やすくするため」とExcel等で再作成・加工した書類は、原本との相違を疑われ不正受給と判断される重大リスクがあります。

9就業規則の条文サンプル「要件・手続・時期」を欠かさない

転換制度の条文に、客観的な要件・手続・実施時期を明示します(自社の実態に合わせて必ず修正してください)。

第○条(正社員転換) 会社は、契約社員のうち、次の各号のいずれにも該当する者について、正社員へ転換させることがある。 1 勤続1年以上であること 2 直近2回の人事評価がいずれもB評価以上であること 3 所属長の推薦を受けていること 4 懲戒処分中でないこと 2 転換を希望する者は、毎年4月1日および10月1日の各1か月前までに所定の申請書を提出する。 3 会社は、書類審査および面接を実施し、その結果に基づき転換の可否を決定する。 4 転換後の労働条件は、正社員就業規則および賃金規程を適用する。 第○条(昇給) 昇給は、勤務成績、能力評価および会社業績を総合的に勘案し、毎年4月に行う。 ただし、会社業績の著しい低下その他やむを得ない事由がある場合は、行わないことがある。

「会社が必要と判断した場合に賃金を改定する」とだけ規定したものは、客観的な昇給基準として弱く、不支給リスクが高くなります。

10賃金3%増額の落とし穴「2.99%」で不支給を防ぐ

転換後6か月の賃金が、転換前6か月と比べ3%以上増額していることが必要です。計算ミスでの不支給が多発しています。

日割り計算のミス

月途中転換時の基本給・固定手当の日割り誤りで「2.99%」となり不支給に。

固定残業代だけでの増額

固定残業代の差は原則「賃金計算方法の差」と認められません。基本給・固定的手当で改善を。

確認ツールは事実上必須

厚労省の「賃金増額要件確認ツール(最新Excel)」で必ず検証。独自計算は危険です。

11不支給を招く「罠」チェック1つでも該当すると致命傷

!
計画期間外の取組:実施日が計画期間外(救済不能)。「提出日」と「計画始期」を混同しない。
!
転換制度の条文不足:要件・手続・実施時期のいずれかが欠落。
!
転換後の試用期間:無期→正規扱いとなり支給額が半減、申請起算も後ろ倒し。設定しないのが原則。
!
6か月賃金支払日の数え間違い:時間外手当を翌月別払いなら、その支払日が起算基準。
!
書類の矛盾:就業規則・雇用契約書・賃金台帳・出勤簿の不整合。
!
本人未確認で「確認済み」申請:虚偽申告と判断されます。
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社保・雇保の未加入:適用要件を満たすのに手続漏れ。
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離職・関連会社への転籍:申請日までに離職、または6か月以内に事業主都合で転籍出向。
!
様式の版違い:令和8年4月8日以降の様式を使用しているか。
!
申請期限の徒過:必着(消印無効)。閉庁後の私的投函は無効。

そもそも対象外となる労働者

事業主の3親等以内の親族
技能実習生・特定技能1号(在留に上限があり長期雇用前提に反するため)
新規学卒者で、雇入れから1年未満の転換

12申請前の最終チェック提出直前に必ず確認

就業規則の有効性:労基署へ届出済みか(10人未満は申立書があるか)。
書類の真正性:原本のコピーで、Excel等で加工・転記していないか。
在籍継続:対象者は申請日まで継続雇用されているか。
計算の完全性:3%増額は最新Excelツールで検証済みか。
計画期間の遵守:取組は計画期間内に完全に収まっているか。
情報公表加算:客観的な要件・基準と具体的な実施時期(例:4月・10月)を含むか。

13解説動画令和8年度キャリアアップ助成金サバイバルガイド

制度の全体像と申請の勘所を動画でも確認できます。

YouTubeで開く

14公式リンク集必ず最新版で確認

本ページは、厚生労働省の公表資料および令和8年度版マニュアルに基づき、正社員化コースの申請実務を分かりやすく整理した参考情報です。支給額・要件・様式は年度途中で改定される場合があり、また個別事案では結論が変わり得ます。実際の申請にあたっては、必ず厚生労働省の最新の支給要領・パンフレット・Q&A・様式をご確認のうえ、社会保険労務士など専門家にご相談ください。