セミナー資料3
事例 1
前回の東日本大震災で津波に巻き込まれて園児5人が死亡したのは、園側が安全配慮義務を怠ったためなどとして園児4人の両親が園を相手取り学校法人と当時の園長に対し計2億7000万円の損害賠償請求の訴えを仙台地裁にしています。
母親のもとに帰したいという意思があったかもしれませんが、当時大津波警報が発せられていたにもかかわらず高台の幼稚園から海沿いの住宅地へバスを走らせた。
幼稚園には地震発生時には幼稚園にて保護者に園児を引き渡すマニュアルがあったというが職員に周知されていなかった。
十分に情報収集しないままにバスを発車させた園の責任を問う(被告側弁護士)とあります。
この事例からわかること
また、今回津波の犠牲になった小学校などの例でもわかりますように、まず高台へ逃げることが第一と考える場合、親に来てもらわず学校または施設で避難するほうが安全なケースもあります。
これらの事例からわかるように、災害時対策マニュアルの整備、周知徹底が必要であること、随時状況に応じてマニュアルの見直しも必要であることがわかります。
事例2
自動車運転中にてんかんを発症し意識を失った状態で衝突し死亡事故を発生させた運転手とその運転手を雇用した会社及び同会社の代表取締役に対し使用者としての各損害賠償責任が認められた事例(横浜地裁判決昨年10月)がありました。
6人の児童が死亡した遺族34人が被告、被告の母親、勤務先土木会社に対し計3億7770万の損害賠償訴訟を宇都宮地裁に提訴しています。
この事例からわかること
民法第715条(使用者等の責任)
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
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前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。
事例3
介護士による暴行事件が発覚した紀の川市貴志川町北山の介護福祉施設「デイサービスセンターほたる」で29日、新たに別の介護福祉士が認知症の利用者に暴行していた疑いで逮捕された。高齢者への虐待は全国的に増加傾向にあり、県も事件を受けて県内事業者に注意喚起するなど防止策に乗り出している。
29日に逮捕されたのは、介護士、北浦一樹被告(25)と介護福祉士、広瀬有城容疑者(28)。北浦被告は利用者の認知症の女性への暴行容疑で逮捕され、29日に起訴されており再逮捕となる。今回の逮捕容疑は、いずれも同施設で認知症の男性(当時81歳)の頭を殴るなどしたとされる。岩出署は同日、同施設などを家宅捜索した。
この事例からわかること
虐待を受けているまたは虐待行為を受けていると思われる場合には、一般の人であっても通報義務(または通報努力義務)を負います。
さらに、介護施設従事者に関しては、高齢者虐待防止法において、高齢者の虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、高齢者虐待の早期発見に努めるようにとの特別な努力義務が課されています(同法5条第1項)。
通報が誤報であったとしても、何の非難も受けませんし、通報をもって守秘義務違反に問われることもありません。手遅れになる前に通報しましょう。
介護事業者に高齢者への虐待防止を徹底することが必要です。
虐待の芽を早期に摘むため職員の乱暴な言葉使いなどを把握、是正することなどを求められています。
とある新聞記事に介護職場の職員の投稿がありました。(以後抜粋します)
暴行容疑で介護福祉士らが逮捕されました。
耐え難い事件ですが、虐待するために介護職についたわけではないでしょう。
介護現場は過酷です。 突然ランプが付き、非常事態になればすぐに手伝いにいかなければなりません。
しかし、一方おむつ交換や入浴介助を「きりのよいところまでやってから」と考えても、食事介護、シーツ交換、入浴介助など山ほどの仕事はすべて作業時間が割り振られています。
介護の現場では、新入社員がベテランに意見を言うことは難しく、閉塞感にとらわれている職員が多数います。時間に追われる環境では新人だけでなく、だれもが潰れ壊れ、職場を去る人が少なくありません。
だからといって3人がやった虐待、暴行は絶対にあってはならないことです。 どんな職場環境であろうと情熱をもって頑張っている介護職員が前項に大勢いることも事実なのですから
このように介護労働については過酷でつらい場面も多く、知らず知らずのうちにストレスがたまるものでもあります。
介護労働者の適正な労働環境の整備とともに、虐待等が発生しないような内部けん制システムの構築が不可欠です。
小さな苦情、クレームにも真摯に向き合う体制も必要です。
「ハインリッヒの法則」というものがあります。これは、「生命等にかかわる重大事故」が1件発生した場合、その背景には29件の軽微な事故があり、さらにその背景には300件もの「異常」が生じているというものです。つまり、苦情・クレームを「異常」ととらえた場合、その処理がきちんとなされず蓄積されていくと、コップの水が溢れる瞬間が訪れるように、重大事故が引き起こされるという流れになっているわけです。
事例4
Aさんは、ソフト開発会社でシステムエンジニアとしての業務に従事していました。入社以来、年間総労働時間は平均して約3,000時間近くに達していました。
Aさんは、就任してから死亡するまでの約1年間、プロジェクトリーダーとしてプロジェクトの進捗管理、要員管理、品質管理及び発注元及び協力会社との調整作業にあたっていました。
クライアントと作業者の間での板挟み状態の中、労働時間だけでなく、精神的負荷まで強いられることとなりました。
その後、Aさんは、自宅で倒れ、直ちに病院に緊急搬送されましたが、脳幹部出血により死亡しました。
【裁判の結果】
安全配慮義務を尽くさなかった債務不履行がある旨主張し、逸失利益・慰謝料等の損害賠償を求めました。
第2審は3,200万円の損害賠償責任を認めました。
使用者の労働者に対する解雇が当該労働者が業務上の疾病としてうつ病にかかり、その療養のために休業していた期間になされたものとして労働基準法の解雇制限に反し違法とされた事例もあります。
労働者に生じた うつ病の発症及びその憎悪に関し、発症及びその憎悪に関し一定時期までの部分について使用者に不法行為及び雇用契約上の債務不履行が成立するとして損害賠償が認められた事例
この事例からわかること
昨年7月厚生労働省によって定められた4大疾病(がん、脳卒中、心臓病、糖尿病)に新しく精神疾患を含めて5大疾病とする方針が決まりました。 ほかの4大疾病をぬき今や患者数が350万人にも及びます。
また国会には労働安全衛生法の改正案が出されていて、職場のメンタルヘルス対策が義務つけられる方向性にあります。
近年精神疾患の患者が急増している背景には 経済環境、不安定な職業環境なども背景にあると思います。
メンタルヘルスチェックシートなどの実施(健康診断) 相談体制 職場復帰プログラム
うつ病の初期症状 (メンタルヘルスは重症化してからでは回復が困難です。)
け 欠勤
ち 遅刻
な 涙もろくなる
の 能率が下がる
み ミスが増える
や やめたいという
睡眠障害、食欲不振 頭痛肩こり めまい 2週間以上続くと疑う余地あり
治療の基本は休養
非定型型うつ病 新型うつ病
自分を責める従来型と異なり周囲に責任を転嫁する
他罰的傾向が強い 過食、過眠 仕事の時だけうつj様態になる。 体が鉛のように重い 季節性うつ
メンタルヘルス対策
ア 目的を明確にすること。 職場環境の問題点を把握し、改善目標と改善目的を明確にする必要があります。 例えば、単に労働者のメンタルヘルス不調の予防だけを目指すのか、労働者のストレスの軽減を図り、 組織全体の活性化と生産性アップを目指すのか、目的と目標に応じて対策の立て方は異なります。 あるいは何が問題になりそうで、それを解決するにはどのような対処方法を実施すればよいかを 考える必要があります。 |
イ 明確なルールをつくること。 明確なルールを定めていない事業場があります。休業や復職は個々の労働者の状況が異なるので、 ケースバイケースで判断せざるを得ませんが、基本的な取り決めは必要です。 その理由について復職を例にしますと、1つには、復職する労働者は復職時の 業務内容等が事業場としての判断なのか、関係者が主観的に決めているか不明であること、 1つには、復職を許可する事業場側も、関係者や組織の利益を優先し、 決定事項に偏りが生ずる可能性がある等その場その場で対応していると、 労働者によって対応に差が生じ無用なトラブルに発展する場合もあります。 |
ウ 人事労務管理部署との連携を図ること。 必要です。人事・労務スタッフと産業保健スタッフ及び現場の管理職が三位一体となって、 実態に即した復職プランを検討する必要があります。 |
エ メンタルヘルス疾患の特性を考えること。 職場以外のストレス要因も複雑に絡んでいる場合もあり、ケアが困難な場合が多くあります。 したがって、適したタイミングや適したケアをするには、医療専門家の指導は必要です。 |
オ 個人情報保護に留意すること。 事業場内の特定の立場にある人のみが目にすることができるより高いセキュリティの 求められているものであり、その取り扱いにも留意することが重要です。 |
■ 労務問題について
人事労務リスクトラブルは増加傾向にあるだけでなく多様化しています。
リストラや退職勧奨、解雇にまつわるもの
サービス残業や労働条件の引き下げ、パワハラ、セクハラ、職場のいじめの問題、メンタルヘルスなど
これらの人事管理上のトラブルが生じた場合の法人のコスト
対応時間のコスト
訴訟コスト(弁護士)
風評被害 イメージダウン
社内雰囲気の悪化 悪い流れは伝播する。
この事例からわかること
まず 第一に労働法の正しい理解が必要です。
人事部、顧問外部専門家など相談窓口を設ける。
公益通方法、内部通報などは装弾したことを理由に不利益扱いをしないようなルール作りが大切です。
特にメンタルヘルスなどある程度プライバシー保護が必要になる場合
就業規則規定でがんじがらめにすればこういう問題は解決されるという問題でもありません。
人事労務トラブルの多くは誤解や相互理解の不足
コミュニケーション不足に起因していることが多いので、リーダー研修、面接など社内コミユニケーションの場を設けることも肝心です。
事例5
労働基準監督署是正事例
所定労働時間終了後にタイムカードを打刻させてから残業させていた小売業の事例や、自己申告書の用紙交付を抑制していた旅館業の事例等あげられています。
この事例からわかること
労働時間管理記録をきちんとして未払残業などがないようにする。
事業主にとっては気になる動きもあります。
去年11月より厚生労働省がメールによる情報提供を受け付ける窓口を開設したことです。
メールアドレス、件名、内容は必須ですが個人名を明かすことなく24時間通報が可能になったわけで言ってみれば密告がしやすくなったといえるでしょう
労働基準監督署の調査
年単位の定期訪問 事故訪問 労働者の親告による訪問があります。