① 採用・試用期間に関するQ&A
労務問題のほとんどは採用段階で決まります。「迷ったら採用しない」が鉄則です。
Q1. 人手不足で急いで採用したいのですが、面接だけで判断してよいでしょうか?▶
A. 面接だけでの判断は極めてリスクが高いです。日本では一度採用すると原則として解雇が困難なため、採用段階での見極めが最も重要になります。
推奨する採用プロセス:
- 中途採用では、前職の職歴証明書(勤務期間・仕事内容・退職理由)を提出してもらう
- 採用アンケートで聞きづらい内容を書面で確認する
- 既往症やメンタル疾患の有無を確認する(違法ではありません)
- ハロー効果(学歴・資格だけで高評価してしまう)に注意する
💡 ポイント: 面接で「違和感」「ボーダーライン」と感じたら採用しないでください。急いで採用した問題社員は、会社全体の士気を下げ、経営者の膨大なストレスになります。
Q2. 試用期間中なら自由に解雇できますか?▶
A. 試用期間中であっても、自由に解雇できるわけではありません。ただし通常の解雇よりは解雇権が留保されているため判断の余地はあります。
- 試用期間中でも14日を超えて雇用した場合は、解雇予告または解雇予告手当(30日分の賃金)が必要です
- 就業規則に合理的な解雇事由が定められていて、採用時に予見できなかった事情が判明した場合に限られます(麹町学園事件)
- 面接時に判明しなかった適性不足・勤務態度の問題など、合理的理由が必要です
根拠: 労働基準法第20条(解雇予告)、三菱樹脂事件(最高裁昭和48年)、麹町学園事件
Q3. 試用期間を何か月に設定すればよいですか?延長はできますか?▶
A. 通常は3か月、長くて6か月が一般的です。1年を超えるような長期設定や、安易な延長は無効と判断されるリスクがあります。
- 試用期間の延長には、就業規則に延長に関する根拠規定が必要です
- 延長には「公序良俗違反・信義則違反に当たらないこと」「本人の適格性判断に必要合理的な範囲であること」が求められます
- 試用期間終了時に本採用について何も告げずに勤務させると、本採用したとみなされます
💡 推奨: まずは3か月〜6か月の有期契約社員として採用し、適性を見極めた後に正社員化する方式が最もリスク回避になります(キャリアアップ助成金の対象にもなります)。
Q4. 内定を出した学生を、業績悪化を理由に取り消せますか?▶
A. 一度出した内定は、原則として一方的に取り消すことはできません。内定段階で労働契約が成立していると判断されるためです(大日本印刷事件)。
内定取り消しが可能な限定的ケース:
- 学校を卒業できなかった
- 虚偽の書類や採用判断に重大な影響を与える嘘があった
- 業務ができないほどの重大な傷病
- 犯罪など不適格事由が判明した
⚠ 注意: 業績悪化による取り消しは整理解雇の4要件(人員削減の必要性・解雇回避努力・人選の合理性・手続きの妥当性)を満たす必要があり、現実には損害賠償で決着することがほとんどです。
Q5. 採用してはいけないタイプの人材はありますか?▶
A. 以下のような傾向がある方は、慎重な判断が必要です。
| 要注意のタイプ | リスク |
| 何でも人のせいにする他罰的タイプ | ハラスメント申告や虚偽告発の恐れ |
| ストレス耐性・受け流し能力が低い | すぐうつ病などを理由に離職・訴え |
| コミュニケーション能力が低い | 職場の人間関係を悪化させる |
| 上司に反抗的・指示待ちで自主性なし | 指導がハラスメント申告につながる |
| 不平不満ばかり述べる | 周囲の士気を下げる |
| 権利ばかり主張し労働義務を果たさない | 労基署等への駆け込みリスク |
② 労働契約・有期雇用に関するQ&A
Q1. 労働契約書には最低限何を明示する必要がありますか?▶
A. 労働基準法第15条により、以下は必ず書面で明示しなければなりません。
【書面での明示が必要な事項】
- 労働契約期間
- 就業の場所、従事すべき業務
- 始業・終業の時刻、所定時間外労働の有無
- 賃金の決定計算方法、支払方法、締め日、支払時期
- 退職(解雇の事由を含む)に関する事項
【口頭でもよい事項】
昇級、退職手当、臨時に支払われる賃金、賞与、食費負担、安全衛生、職業訓練、災害補償、表彰制裁、休職など
根拠: 労働基準法第15条、労働基準法施行規則第5条
Q2. 有期契約社員を雇う際に追加で明示すべきことはありますか?▶
A. 有期雇用の場合は、トラブル防止のため以下も明示する必要があります。
- 契約更新の有無(自動更新/更新する場合がある/更新しない)
- 契約更新する場合の判断基準(業績・勤務成績・能力など)
⚠ 雇止め法理(労働契約法第19条): 何度も契約更新されて実質的に無期契約と変わらない場合、または労働者が更新を合理的に期待できる状況では、一方的な雇止めは無効になり得ます。契約更新は形式的にならず、毎回面談のうえ実施してください。
💡 無期転換ルール(労働契約法第18条): 有期労働契約が通算5年を超えて更新された場合、労働者は無期転換を申し込むことができます。対応方針を事前に決めておいてください。
Q3. パート社員と正社員で、どこまで待遇差をつけてよいですか?▶
A. パートタイム・有期雇用労働法により、「同一労働同一賃金」が求められます。不合理な待遇差は禁止されています。
差別的取扱いが禁止されるのは、以下の全条件に当てはまる場合です:
- 職務内容(業務の内容・責任の程度)が同じ
- 人材活用の仕組み・運用(配転・昇進の範囲等)が同じ
- 期間の定めがない(または実質的に同じ)
💡 賞与の扱い: 賞与は法律上の支給義務はありませんが、支給する場合は正社員同様のパート社員には、職務内容に合わせた支給を考慮する必要があります。
Q4. 最初から良い条件で採用したほうが人が集まりますが、リスクはありますか?▶
A. 大きなリスクがあります。「最初が肝心。上げるのは簡単でも下げるのは困難」が労働契約の大原則です。
慎重に扱うべき条件:
- 前職の給与に合わせた高水準の基本給設定
- 定期昇給の確約(今の時代、中小企業は業績連動が望ましい)
- 賞与・退職金の確約(「業績・功労により支給することがある」程度の規定に)
- 労働基準法を上回る特別休暇・有給・休職規定
⚠ 労働条件引き下げは不利益変更となり、会社側がほぼ負けます。 業績連動・固定費削減型の賃金体系を最初から導入することが、中小企業の鉄則です。
Q5. 資格取得費用を会社負担で出しました。短期で辞める場合、返還を求められますか?▶
A. 原則として、労働基準法第16条により「労働契約の不履行について違約金を定め、または損害賠償額を予定する契約」は禁止されています。ただし、合理的な実費立替の場合は有効とされた判例があります。
- 合法となり得るケース: 労働者の申出により会社が費用を支弁し、約束期間内に辞めた場合に返還する単なる金銭消費貸借契約(藤野金属工業事件)
- 合法となり得るケース: 業務上の必要でない留学費用の返還合意(長谷工コーポレーション事件)
- 無効となるケース: 業務遂行に不可欠な研修費用の返還、過度に長期の拘束期間
根拠: 労働基準法第16条(違反:6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)
③ 就業規則・不利益変更に関するQ&A
Q1. 就業規則の作成義務は従業員10人以上と聞きましたが、正社員だけ数えればよいですか?▶
A. いいえ、パートタイマー・契約社員を含めた全従業員数が10人以上になれば作成義務があります。
⚠ 落とし穴: 就業規則に特別の定めがなければ、記載内容はパート・契約社員にも準用されるため、退職金規程があれば彼らにも払わなくてはならなくなります。
対応策:
- 正社員用就業規則に「この規定は、◯◯株式会社の正社員に適用する」と明記
- 別途、パートタイマー用・契約社員用の就業規則・賃金規程を設ける
根拠: 労働基準法第89条(就業規則の作成・届出義務)
Q2. 業績悪化に伴い、退職金規程を廃止または縮小できますか?▶
A. 非常に困難です。就業規則の不利益変更は原則禁止であり、「高度の必要性に基づいた合理的な内容」が求められます(労働契約法第10条)。
合理性判断の要素:
- 不利益の程度(影響を受ける労働者の経済的打撃)
- 変更の必要性(会社の経営状況・存続への影響)
- 変更内容の相当性(代償措置や経過措置の有無)
- 労働組合または従業員代表との交渉経緯
- 社会的相当性
⚠ 実務上の注意: 一方的な退職金規程廃止は敗訴するケースが多いです。必ず労使協議・経過措置・代償措置を講じ、社労士・弁護士のアドバイスを受けてください。
Q3. 退職金規程がなくても、過去に払っていた実績があれば支払い義務はありますか?▶
A. はい、支払い義務が生じる可能性があります。就業規則に明文規定がなくても、一定の基準で退職金が支払われていた確立した慣行がある場合、雇用契約の内容とされるという判例があります(日本ダンボール研究所事件)。
⚠ 隠れ債務: 退職金支払慣行がある場合、未払い退職金として訴えられるリスクがあります。必ず就業規則・退職金規程で「有無・支払額・時期・方法(年金か一時金か)」を明確にしてください。
Q4. 固定残業代を漫然と出していますが、問題ありますか?▶
A. 大きな問題があります。労働条件通知書・就業規則・給与明細で、「固定残業代に相当する時間数」と「固定残業代の金額」を明示していないと、後から残業代を請求された場合に固定残業代分も含めて追加請求されるリスクがあります。
適正な固定残業代の要件:
- 通常の労働時間分の賃金と、固定残業代が明確に区別されていること
- 何時間分の残業に相当するのか明示されていること
- 設定時間を超える残業があった場合は、別途支払う旨が明記されていること
- 実際に超過分を支払っていること
Q5. 繁忙期と閑散期の差が大きく残業代がかさみます。対応策はありますか?▶
A. 1か月単位または1年単位の変形労働時間制を就業規則で整備することで、一定程度解決できます。
- 1か月単位の変形労働時間制:月末月初、土日、確定申告期など短期集中型の業務に有効
- 1年単位の変形労働時間制:季節変動が大きい業務に有効(労使協定が必要)
- フレックスタイム制:労働者の自律的な働き方ができる職種に有効
💡 注意: 変形労働時間制は要件が複雑で、就業規則・労使協定の整備と適切な運用が必要です。社労士への相談を推奨します。
④ 日常労務管理に関するQ&A
Q1. 部下を叱ったらパワハラと言われました。どこまでが指導でどこからがパワハラですか?▶
A. 業務上必要な指導はパワハラではありません。しかし以下はパワハラと認定されるリスクが高い行為です。
- 感情的に怒る・侮辱する(「バカ」「給与泥棒」などの発言)
- 長時間・執拗な叱責
- 身体的攻撃
- 本人の性格・人格・家庭環境への攻撃
- 1人だけ別室・人間関係の切り離し
- 過大な要求・逆に全く仕事を与えない過小な要求
- 個人攻撃・退職勧奨
💡「借りてきた猫」を意識してください:
- か 感情的にならない(冷静に)
- り 理由を話す(まず褒めてから叱る)
- て 手短に
- き キャラクター(人格)攻撃しない
- た 他人と比較しない
- ね 根に持たない
- こ 個別に叱る
Q2. 有給休暇を古い年から消化しないといけないですか?▶
A. 就業規則に特段の定めがない場合、古い年から消化されるのが通例です。そのため、残日数が減らず退職時に一斉消化されるケースがあります。
対応策: 就業規則に「年休の消化は本年発生分から消化する」と明記すれば、翌年の繰越分を減らすことができます。
補足: 年次有給休暇の時効は2年です(労働基準法第115条)。年5日の時季指定義務(年10日以上付与される労働者)は必ず守ってください。
Q3. 急に休んで「有給扱いにして」と言われました。断れますか?▶
A. 原則として、年休は労働者の好きな時に理由を問わず取得できるものです。ただし以下の対応は可能です。
- 事業の正常な運営を妨げる場合(代替要員を確保しても業務が正常に運営できない場合)は、会社は「時季変更権」を行使できます
- 就業規則に以下を定めることで、規律を保つことができます
- 「無届の欠勤は有給扱いにしない」
- 「あらかじめ希望する日時を届け出なければならない」
- 「請求された時期が業務の正常な運営を妨げるときは、他の時期にあたえることができる」
- 計画的付与(労使協定により5日を超える部分を計画的付与)
Q4. 出向・転勤を拒否されました。命令できますか?▶
A. 場合分けして考える必要があります。
【在籍出向(籍は元の会社)】 就業規則・労働協約に出向規定があり、合理的な範囲であれば業務命令として可能です。ただし以下はNG:
- 就業規則・労働協約に出向規定がない場合
- 特に必要がない出向、全く違う職種への意味のない出向
- 介護する家族がいるなど、労働者の不利益が大きすぎる場合
- 労働契約時に勤務地限定で契約したのに違う場所に飛ばす場合
【転籍出向(籍が違う会社に移る)】 原則として本人の同意が必要です。転職と同じ意味を持つためです。
関連判例: 日立精機事件(転籍に包括的同意がある場合)、日東タイヤ事件(重大な不利益変更は同意が必要)、ネスレジャパン事件(介護困難となる配転命令は無効)
Q5. 賞与支給日直前に退職する人に、ボーナスを払わなくて済みますか?▶
A. 就業規則の規定次第です。
- 「算定対象期間に在職していた者」と規定されている場合 → 支給日退職者にも支払い義務あり
- 「支給日に在職している者」と規定されている場合 → 支払い義務なし
賞与は労働基準法上、必ず支払う義務のあるものではなく任意のものです。規定を明確にしておくことが重要です。
💡 予防策: 「賞与は将来にわたる就業意欲向上のために支給する」と位置づけ、支給日在職者に限る旨を明記するのが一般的です。
Q6. 記録を残すことが大事と聞きましたが、どのように残せばよいですか?▶
A. トラブル予防の最大の武器は「記録」です。以下を日常的に残してください。
| 記録すべきもの | 内容 |
| 指導記録簿 | 日付・指導内容・本人の反応・改善状況 |
| 勤怠記録 | 客観的な方法(タイムカード・PCログ等)による出退勤時刻 |
| 問題行為の記録 | 日時・場所・具体的な言動・目撃者 |
| 始末書 | 本人の署名入り |
| 面談記録 | 1対1ミーティングの日時・内容メモ |
💡 注意: 現在はスマホで簡単にパワハラ録音ができる時代です。感情的な発言・侮辱・人格攻撃は絶対にしないでください。
⑤ 退職・退職金に関するQ&A
Q1. 退職金制度を導入していますが、見直したいと思います。注意点は?▶
A. 基本給連動型(退職時の基本給×勤続年数×支給率)の退職金規程は、隠れ債務として非常に危険です。特に高度経済成長期・バブル期に作られた規程は早急に見直しが必要です。
見直しの選択肢:
- 中小企業退職金共済(中退共)への移行:外部積立、国庫補助あり
- 確定拠出年金(企業型DC):運用リスクは従業員負担、ポータビリティあり
- 確定給付年金(DB):給付額があらかじめ決定、運用責任は会社
- 退職金ポイント制への移行:勤続・職能・業績によるポイント累計方式
- 前払い退職金制度への移行
⚠ 注意: 退職金規程の一方的な不利益変更は敗訴リスクが非常に高いです。必ず労使協議・経過措置を講じ、社労士・弁護士・税理士の複合的アドバイスを受けてください。
Q2. 従業員が退職する時、退職金はいつまでに払う必要がありますか?▶
A. 原則として、労働基準法第23条により、権利者(労働者・遺族)から請求があれば7日以内に支払う必要があります。
ただし、退職金は金額が大きいため、就業規則に履行期を定めておけば、その期間までの支払いが認められます。
例: 「退職金は1か月以内に半額、6か月以内に残額を支払う」など
⚠ 注意: 労働者の借金取り等に未払い賃金を払っても、金品を返還したことにはなりません。本人または相続人の請求があれば、2重払いを求められる可能性があります。
Q3. 同業他社に転職した社員の退職金を減額したいのですが?▶
A. 就業規則・退職金規程に競業避止義務違反時の減額規定を設けておけば、一定範囲で認められる可能性があります(三晃社事件の判例等)。
有効とされる要件:
- 競業避止義務の対象期間が合理的である(通常2年以内)
- 対象地域・対象業種が限定されている
- 労働者の職業選択の自由を過度に制限しない
- 規程・合意書面の整備があること
💡 予防策: 採用時または重要ポストへの登用時に、競業避止・秘密保持に関する誓約書を取り交わすことを推奨します。
Q4. 引き継ぎをせずに突然辞める社員がいて困ります。損害賠償できますか?▶
A. 労働基準法第16条により、あらかじめ違約金や損害賠償額を予定する契約は禁止です。しかし、実際に引き継ぎを怠ったことで会社に損害が発生した場合、実損額に応じて損害賠償請求することは可能です。
予防策:
- 就業規則に「退職の申出は30日前までに行うこと」「引き継ぎを完了してから退職すること」を明記
- 退職願は退職前に必ず提出させる(有給全消化のうえ会社都合にしろという要求に応じない)
- 日常から業務の属人化を避け、マニュアル化・共有化を進める
- 退職金規程に「引継ぎを完了せずに退職した場合は減額できる」旨を規定(合理性の範囲で)
⚠ 注意: 雇用保険の不正受給(自己都合を会社都合にする等)に協力すると、会社にも重大なペナルティが科されます。
Q5. 退職勧奨をしたいのですが、どう進めればよいですか?▶
A. 退職勧奨は解雇と異なり合意による退職ですが、進め方を誤ると「退職強要」としてパワハラ・不法行為に該当するリスクがあります。
適正な進め方:
- 複数回・長時間にわたる説得、1対多の詰問は避ける
- 本人に熟考する時間を与える(即決を迫らない)
- 退職届は本人の自由意思で提出してもらう
- 合意退職の条件(退職日・退職金・離職区分)を書面化する
- 記録を残す(日時・場所・参加者・内容)
💡 解雇と退職勧奨の違い: 解雇は使用者の一方的意思表示(厳格な要件あり)、退職勧奨は合意に向けた話し合いです。懲戒解雇でも「論旨解雇」(自主退職を促す)にすれば、失業手当の扱いも含め円満退職が可能です。
⑥ 解雇・懲戒に関するQ&A
Q1. 能力不足の社員を普通解雇できますか?▶
A. 日本の労働法制のもとで能力不足を理由とする解雇は極めて困難です。労働契約法第16条により、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当でない解雇は無効とされます。
認められるためのステップ(厳格に踏んでください):
- 就業規則に解雇事由を具体的に規定
- 業務上の問題点を書面で指摘・注意を繰り返す
- 改善のための指導・教育を実施し、その記録を残す
- 配置転換等、解雇を避ける努力を行う
- 始末書等を複数回取る
- それでも改善しない場合に、解雇予告手続(30日前予告または30日分の賃金)
⚠ 現実: 解雇は不可能と考えたほうがよく、そこから考えると「解雇するような人材をいかに採用しないか」が最重要です。
Q2. 業績悪化による人員削減(整理解雇)はできますか?▶
A. 整理解雇は以下の「4要件」を全て満たす必要があります。
- 人員削減の必要性:企業の経営状況から人員削減がやむを得ないこと
- 解雇回避努力義務:役員報酬カット・新規採用停止・残業削減・希望退職募集・配置転換等を尽くしたこと
- 被解雇者選定の合理性:人選基準が合理的で、公平に適用されていること
- 手続きの妥当性:労働組合や労働者への十分な説明・協議
適正なステップ例:
残業規制 → パート・アルバイトの削減 → 採用停止 → 配置転換・出向 → 希望退職募集 → 退職勧奨 → 整理解雇
Q3. 懲戒処分を科す際の注意点は?▶
A. 懲戒処分には以下の要件が必要です(労働契約法第15条)。
- 就業規則に懲戒事由と処分内容が明記されていること(罪刑法定主義的な考え方)
- 処分対象の行為が懲戒事由に該当すること
- 処分内容が行為の重大性に照らして相当であること(二重処罰の禁止、平等取扱いの原則)
- 適正な手続き(本人への弁明機会の付与等)が取られていること
懲戒の種類(軽い順): 戒告・譴責 → 減給 → 出勤停止 → 降格 → 諭旨解雇 → 懲戒解雇
減給の上限(労働基準法第91条): 1回の額は平均賃金の1日分の半額以下、総額は1賃金支払期における賃金総額の10分の1以下
Q4. いきなり「明日から来なくていい」と解雇してはダメですか?▶
A. 絶対にダメです。 労働基準法第20条違反となり、下手をすると書類送検もあり得ます。
解雇予告の原則:
- 少なくとも30日前に予告する、または
- 30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う、または
- 両者の併用(例:10日前予告+20日分の予告手当)
予告手当が不要な労働者(労働基準法第21条):
- 日雇い労働者(1か月を超えて引き続き使用されたら必要)
- 2か月以内の期間を定めて使用される者(所定期間を超えたら必要)
- 季節的業務に4か月以内の期間で雇用される者(所定期間を超えたら必要)
- 試用期間中の者(14日を超えたら必要)
根拠: 労働基準法第20条・第21条
Q5. 無断欠勤が続き連絡が取れなくなった社員を解雇できますか?▶
A. 一定期間の無断欠勤は懲戒解雇事由となりますが、手続きを踏まずに解雇すると後でトラブルになります。
適正な手順:
- 本人の携帯・自宅・緊急連絡先に連絡を試みる(記録を残す)
- 内容証明郵便で出社指示を送る(通常「○月○日までに連絡なき場合は懲戒処分」と警告)
- 親族・緊急連絡先からも状況確認(うつ病などの可能性も考慮)
- 就業規則の懲戒事由(一般的に「連続7日〜14日以上の無断欠勤」)に該当することを確認
- 所定の手続き(弁明機会の付与等)を経て懲戒処分を決定
💡 就業規則に「◯日以上無断欠勤かつ連絡不能の場合は、当然退職とする」旨を定めておくと、退職処理がスムーズです(自然退職規定)。
🏗️ 業種別労務問題の特化情報
業種ごとに固有の労務リスクがあります。はやし会計のブログで詳しく解説している記事をご案内いたします。クリックで当事務所のWebサイト記事に移動します。
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建設業
2024年問題(時間外労働の上限規制)、建退共、一人親方の労災、外国人技能実習生など、建設業特有の労務課題は多岐にわたります。
主な論点:
- 時間外労働の上限規制(月45時間・年360時間)への対応
- 建設業退職金共済制度(建退共)の活用
- 現場作業員の労働時間管理
- 下請け会社との関係整理
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運送業
2024年問題による時間外労働規制、改善基準告示の厳格化、ドライバー不足による採用難など、喫緊の課題が山積している業種です。
主な論点:
- トラックドライバーの時間外労働上限(年960時間)対応
- 改善基準告示(拘束時間・休息期間)の遵守
- デジタルタコグラフ・運行記録の管理
- 働き方改革による運賃転嫁と人材確保
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医業・クリニック
医師・看護師・医療事務など多様な職種が混在し、女性比率が高く、労務管理が特に繊細な業種です。勤務医の働き方改革も始まっています。
主な論点:
- 勤務医の時間外労働上限(2024年4月〜)対応
- 看護師・医療スタッフの夜勤・宿直の扱い
- 女性職員の産休・育休・時短勤務
- ハラスメント(特に医師⇔スタッフ間)対策
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介護・社会福祉
人手不足が最も深刻な業種の一つです。夜勤シフト管理、処遇改善加算の活用、ハラスメント対策が重要なテーマです。
主な論点:
- 変形労働時間制(夜勤シフト)の適正運用
- 介護職員処遇改善加算・特定処遇改善加算の活用
- カスタマーハラスメント(利用者・家族⇔職員)対策
- 外国人介護人材(EPA・特定技能等)の受入
💡 業種特化のご相談について: 上記以外の業種(飲食業・小売業・卸売業・製造業・サービス業・宿泊業など)でも、金融庁「業種別支援の着眼点」に基づく経営支援・労務診断が可能です。お気軽に 029-886-4388 までお問い合わせください。
🔍 労務リスク自己診断ツール
以下の20項目のうち、「できていない・不安がある」項目をチェックしてください。チェック数が多いほど労務リスクが高い状態です。